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- 2020年
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肩腱板断裂について
理学療法士の久保田です。
今回は肩腱板断裂について説明させていただきます。
【肩腱板断裂とは】
特徴
- ・自然治癒しない
- ・加齢とともに頻度が増加
- ・断裂があっても2/3の人は痛みはない
肩腱板断裂とは、肩甲骨と腕の骨(上腕骨)をつなぐ腱が切れた状態のことをいいます。腱板は4 つの筋肉(棘上筋・棘下筋・肩甲下筋・小円筋)で構成されており、腕を上げたり下げたり回したりする際に、上腕骨が肩甲骨からズレないように安定させる役割を担っています。よって、腱板断裂が起こると腕を動かす際に肩が安定しないため、痛みや可動域制限が起こります。
腱板断裂には不全断裂(部分的に断裂した状態)と完全断裂(完全に断裂した状態)があります。断裂の原因には外傷性(瞬間的に強い外力が加わって断裂した状態)と、非外傷性(日常生活での繰り返しの肩への負担により徐々に断裂した状態)のものがあり、受傷機転の違いにより発症年齢などの特徴は異なります。
非外傷性の肩腱板断裂の発生頻度は50 歳代で5%、80 歳代で50%、50 歳以上全体では20%と加齢により断裂のリスクは高くなってきます。加齢によって腱自体が弱くなってしまうこと、加齢とともに胸郭の動きが悪くなり肩への負担が増えてしまうことなどが原因と考えられています。
肩腱板断裂が起こっていても70%の人は痛みがなく断裂していることに気づいていません。残りの30%の人が痛みを発症します。このように、腱板断裂には痛みがある症候性のタイプと、痛みのない無症候性のタイプがあり、必ずしも断裂しているから痛みが生じるわけではありません。その症状の出現には、硬くなって動きにくくなった組織の存在が強く影響しています。一度断裂してしまった腱板は自然治癒して再度繋がることはないですが、この部分を理学療法で治療していくことで、痛みや可動域制限を軽減させていきます。
【症状】
・痛み(腕を上げるとき、回すとき、物を持った時など)
・可動域制限
・力が入りにくい
【治療】
保存治療と手術治療があり、当院ではまずは保存治療を行っていき、その後必要であれば他院にて手術療法を行います。
保存療法は、①消炎鎮痛薬の内服・外用。②ヒアルロン酸やステロイドの関節内注射。③理学療法士の実施する運動療法や物理療法。④筋力トレーニング、ストレッチなどの自己訓練。これらを必要に応じ実施していきます。
上記で説明したように、症状は硬くなって動きにくくなった組織の存在が強く影響しています。運動療 法の中でその組織を探し、治療していくことで肩の動きが良くなり痛みが軽減していきます。
腱板断裂が発症してしまっても必ず手術が必要になるわけではなく、理学療法を実施していくことで日常生活には支障がない程度まで回復可能な場合もあります。
断裂が重度になる前に治療していくことで、手術までいたらない場合もあるので、痛みが出た場合には早めの受診が大切です。